「誰かに話したくなる山本周五郎 日替わりドラマ2」
2月3日からNHK BSプレミアムで放送されている「誰かに話したくなる山本周五郎 日替わりドラマ2」を楽しみに観てます。
山本周五郎の短編小説を30分ドラマ化するシリーズのシーズン2。シーズン1は昨年5本放送され、今回は10本がラインナップ。40年来の山本周五郎読者としては観ないわけにいかない。
ただ、シーズン1のときも思ったけど、原作どおりやってほしいなぁ。
今回も「暗がりの乙松」ってこんな話だっけ?と思って原作を読み返したら、肝心のオチが変わっていた。
「人情武士道」も、ほぼ原作どおりながら、負けたと思った勝負が実は…という胸のすく部分が割愛されている。
もちろんドラマは小説とは違うし、面白くなるなら変えてもいいと思うんですよ。
映画『椿三十郎』だって原作「日日平安」のままではないし。あれはもともと三船敏郎(椿三十郎)が出ない話だからしかたない。ただ、話の骨格は変わってないし、映画のユーモラスな部分、おっとりした奥方や捕虜になる侍とかは意外と原作どおりだったりする。その生かし方はうまいなぁと思うのだ。
山本周五郎は映像化された原作がダントツに多い小説家だ。CSでドラマや映画を観てると「え?これも山本周五郎だったの」と思うことが多い。ただ、近年の映像化作品は「いい話」にしすぎてる感がある。
山本周五郎の短編にはけっこうコミカルな話やひねりのあるストーリーが多くて、人間描写とともにそこが魅力なのだ。脚色でそこを変えてしまうと味わいが変わってしまう。
「誰かに話したくなる山本周五郎」とうたっているドラマなのだから、ドラマを観て「誰かに話し」たら原作とは違ってる、というのはダメなのではないか。30分という長さや予算の都合もあると思うけど、せっかく梶裕貴がナレーションで参加しているのだし、朗読+ドラマの形で原作どおりやってもよかったのではないか。
と思うのですよ。
とか思って観ていたら、「ゆうれい貸家」は原作にないオチがついていて、これは面白かった。
「牡丹花譜」も原作が古い作品でそのままやるのはちょっと無理があるので、リアリティのある筋立てに変えていた。ドラマとしては納得がいくし、ヒロインもよかった。
あ、これはそういうことを「話したくなる」ドラマなのかな。
といことで、残り3話も楽しみに観たいと思います。
いちばんいいことは、こうしてドラマになると原作を読み返すきっかけになる(ほとんど忘れてる)し、ドラマを入口に原作を読もうという人が増えてくれることですね。
ドラマを観て、「いい話だ」と思った人も「もの足りないなぁ」と思った人も、ぜひ原作を読んでほしいです。
今回のラインナップと原作が収録された文庫本は以下のとおり。
2月3日「鳥刺しおくめ」(『美少女一番乗り』角川文庫)
2月4日「暗がりの乙松」(『雨の山吹』新潮文庫)
2月8日「人情武士道」(『人情武士道』新潮文庫)
2月9日、10日「牡丹花譜」前編・後編(『酔いどれ次郎八』角川文庫)
2月11日「ゆうれい貸家」(『人情裏長屋』新潮文庫)
2月15日「半化け又平」(『美少女一番乗り』角川文庫)
2月16日「松の花」(『小説 日本婦道記』新潮文庫)
2月17日、18日「酔いどれ次郎八」前編・後編(『酔いどれ次郎八』新潮文庫)