犬王
湯浅政明監督の最新作、映画『犬王』を観ました。
「観た」というより、「体験した」というほうがぴったり。
圧倒的な映像と音楽を浴びてくらくらしました。
南北朝から室町期の京都を舞台に、人々を熱狂させた能楽師「犬王」を斬新な解釈と映像で描くアニメーション映画。
異形の姿で生まれながらも歌と踊りに並外れた才能を発揮する犬王と平家の呪いで盲目になった琵琶法師・友魚(ともな)が出会い、新しい音楽と舞を披露するポップスターとして人気を集めていく。ふたりの友情と葛藤がドラマとなります。
監督もインタビューで語ってるのでネタバレでないと思いますが、『どろろ』+ロックミュージカル、みたいな作品。
圧巻は友魚が琵琶をかき鳴らし歌うライブシーンです。
室町の京の都にロックサウンドが鳴り響く。
もちろん、琵琶からエレキギターの音がするわけがない。都の人々にはそのくらい新しい音楽に聴こえているという演出なのでしょう。
音楽は『あまちゃん』『いだてん』の大友良英さん。
もともと大友さんはアヴァンギャルドな音楽を作っていた人なので、前半の現代音楽的な音楽が「本領発揮!」という感じで面白い。
見せ場のライブシーンは臨場感にあふれ、エネルギッシュです。
ただ、ここまであからさまにロックにしなくてもよかったのでは…?
ロックへのオマージュが強すぎて、つい、ほかの映画が頭に浮かんでしまう。
もっと、邦楽とロックが融合したような、わけのわからない音楽であったほうが物語に合っていたのではないかな…。
大友さんだったら、そういう音楽が作れたと思うのです。
バレエを思わせる終盤の犬王の舞のシーンも同じくで、序盤の異形の体を持て余したような踊りが迫力があった。
カオスのほうがエネルギーがあったと思うのですね。
とはいえ、聴いたこともない新しい音楽を作るのも難しいし、共感も得づらい。
表現のスタイルとしてロックやバレエを選んだのは、考えた末の落としどころかなと思いました。
ないものねだりを書きましたが、アニメファン必見の作品であるのはたしか。
ちょっとグロいシーンもありますが、心ゆさぶられる体験をしたいという方、お奨めします。