音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」
8月15日、東京芸術劇場で開催された「黒柳徹子のハートフルコンサート2022」に行ってきました。
黒柳徹子さんが毎年8月15日に開催しているコンサートで、今回が32回目だそうです。
演奏は東京フィルハーモニー交響楽団。指揮・角田鋼亮
第1部は前橋汀子さんをソリストに迎えてのクラシック。
ベートーベン「ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番」
サラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」
前橋さんのヴァイオリンが、一音聴いただけで惹きこまれるようなすばらしい音で、心が震えました。
トークで前橋さんが黒柳徹子さんのお父さん(ヴァイオリニスト)に習ったことがあると話すと、黒柳さんが「その話、初めて聞きました」と驚く一幕が面白かった。
第2部が本日のお目当て。 黒柳徹子さんの語りとオーケストラによる音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」です。
黒柳さんの自伝的小説に小森昭宏先生が音楽を付けた作品(構成・黒柳徹子、飯沢匡)。
レコードやCDになっていますが、生で聴くのは初めて。
2016年に小森先生が亡くなって以来、長らく上演してなかったのだそうです。
黒柳さんが小森先生の思い出や小森先生の音楽のすばらしさ、亡くなったあとの悲しい気持ちなどをお話されて、それを聞くだけで泣きそうになりました。
ちなみに黒柳さんのお父さんと小森先生のお父さんは同じオーケストラで演奏した仲。
音楽物語「窓ぎわのトットちゃん」。
あらためて生で聴くと、「録音されたものとは別もの」ってくらい胸に響きました。
まず、音楽がすばらしい。ラジオやテレビ用に書かれる曲とは違って、最初から生演奏するために書かれたスコアなので、オーケストラがふくよかにたっぷり鳴るように書かれている。
それから、メインテーマとなる「トットちゃんのテーマ」のキャッチーさ。その変奏が何度も出てきて、終わるころには頭に刷り込まれてます。トットちゃんと一緒に歌ってしまうくらい。
また、「音楽物語」というのは伊達でない。言葉よりも音楽で描写する演出で、黒柳さんの語り以上に音楽が主役になってます。ほとんど、交響詩とか交響組曲と呼んでもいいくらい。抒情的なテーマから、ユーモア、サスペンス、躍動、クラシックのパロディまで、映像音楽的なテクニックもふんだんに投入されている。描写音楽的な部分や現代音楽的な部分もある。
小森先生自身、戦争で命を失いかけた体験をしているだけに、原作に共感し、音楽的アイデアとテクニックを惜しみなく注ぎ込んだのだでしょう。
そして、全体としては、とても愛情に満ちた、心に染みる作品になっています。
小森サウンドに包まれる幸せな体験でした。
生で聴けてよかった。
ステージを観るまで真価がわからなかったです。
音楽が鳴っているあいだに黒柳さんが細かい芝居をしてるとか、トットちゃんがチンドン屋を呼ぶところでホントにチンドン屋が現れるとか、音だけ聴いてたらわからないもの。
子どもたちも楽しんで聴けるすばらしい作品でした。
ぜひ末永く上演し続けてほしいです。