エンニオ・モリコーネ オフィシャル・コンサート・セレブレーション
11月6日、有楽町・東京国際フォーラムAホールで開催された「エンニオ・モリコーネ オフィシャル・コンサート・セレブレーション」の最終公演を聴きました。
モリコーネのコンサートを聴くのは2004年6月のエンニオ・モリコーネ来日コンサート(「エンニオ・モリコーネ in JAPAN」)以来かも。その間に『ニュー・シネマ・パラダイス』シネマコンサートを鑑賞しましたが(これはすごくよかった)、モリコーネ作品を集めたコンサートは聴いてなかったと思います。
別のところで書いたことがありますが、モリコーネは私が映画音楽を聴くようになるきっかけとなった作曲家のひとり。思えば、50年くらいモリコーネを聴いてきたことになります。そして、モリコーネは2020年に91歳で死去。追悼の想いを胸にコンサートに足を運びました。
10列目の左寄りという恰好の席。ピアニストやハープ奏者の手の動き、指揮者の動きもじっくり見られる。音も大きすぎず、偏らず、よいバランスで聴けました。
コンサートのセットリストはモリコーネが生前考えていたもの。
息子のアンドレア・モリコーネが引き継いで、指揮を担当。アンドレアが指揮することもモリコーネの希望だったとか。
オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。
イタリアから、ピアノ(レアンドロ・ピッチョーニ)、ドラム(マッシモ・ダゴスティーノ)、ベース(ナンニ・チヴィテンガ)、ギター(ロッコ・ジファレッリ)、ソプラノ(ヴィットリアーナ・デ・アミーチス)、それに合唱指揮者(ステファノ・クッチ)とサウンドエンジニア(ファビオ・ヴェンチュリ)も来日して、モリコーネの音を再現します。
第1部が高揚感たっぷりの「正義の力」(『アンタッチャブル』)から始まるのが最高。冒頭から気分が上がりました。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『海の上のピアニスト』とおなじみの名作が続いたあと、マフィアを描いたフィルム・ノワール『シシリアン』が登場するのがうれしい。超好きな作品です。
『ある夕食のテーブル』でぐっとおしゃれなムードになったあと、セルジオ・レオーネ監督作品のコーナー。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ウエスト(ウエスタン)』、『続・夕陽のガンマン』『夕陽のギャングたち』からの選曲。ドラム、ギター、ベース、ソプラノが大活躍。
ここまでが第1部。
東京フィルハーモニーの演奏は丁寧だけど、ダイナミックさがいまひとつの感じ。特にマカロニウエスタンの曲はリズムセクションやソロ楽器に負けている…
と感じたけれど…
第2部は驚くほどよくなっていました。演奏よりPAの調整の問題だったのかも?
2部はチェロデュオ「2CELLOS」のステファン・ハウザーが演奏する「エンニオのテーマ」から。これはモリコーネの作品ではなく、ハウザーがモリコーネをトリビュートして書き下ろした新曲です。映像によるハウザーの演奏とステージ上のレアンドロ・ピッチョーニの生ピアノとの共演でした。
2曲目は『ヘイトフル・エイト』のメインテーマ。
この曲では、オリジナル・サウンドトラックのレコーディング風景がスクリーンに映し出され、映像の中のミュージシャンの指の動きとオーケストラの演奏がシンクロするという超絶的な場面が見られました。
『プロフェッショナル』『ニューシネマ・パラダイス』『マレーナ』と人気作品が続いたあとは、「Social Cinema(社会派映画)」のコーナー。
この選曲がなかなか渋い。「美しいメロディ」のモリコーネ目当てで来ている方は意表を突かれたかも。
『アルジェの戦い』『殺人捜査』『ケマダの戦い』はまだしも、『供述によるとペレイラは…』や『労働者階級は天国に入る』は私も映画を観たことがない。モリコーネのベスト盤にもなかなか入らない曲だし(しかしコンサートではたびたび演奏されている)。
シリアスな曲調と緊張感たっぷりの演奏が胸に刺さります。
この並びだと『死刑台のメロディ』は入らないの?と思ったけど、それはあとに取っておかれていたのでした。
最後は『ミッション』のコーナー。
「ガブリエルのオーボエ」「フォールズ(滝)」「オン・アース・アズ・イット・イズ・イン・ヘブン(地上の楽園)」の3曲。
オーボエの妙なる音色、合唱とオーケストラの盛り上がり。締めくくりにふさわしい演奏でした。
アンコールになり、オルガンの前奏が流れ始めた瞬間、『死刑台のメロディ』!と心の中で叫びましたよ。
『死刑台のメロディ』は、中学生くらいの頃、エンニオ・モリコーネを聴き始めて間もない時期に出会った作品(ベスト盤に入っていた)。主題歌「勝利への賛歌」はジョーン・バエズの歌唱が心に響く名曲で、ふと気が付くと口ずさんでいたりします。だいぶあとになってから映画を観て、すごく辛い、考えさせられる映画だと知りました。
余談ですが中島みゆきの「世情」と「勝利への賛歌」が私の中では重なっています。
アンコールではオーケストラと混声合唱で演奏されましたが、ソプラノのヴィットリアーナ・デ・アミーチスが歌ってくれてもよかったのになぁとちょっと思いました。
さらにアンコールは続き、第1部のラストの曲「エクスタシー・オブ・ゴールド(黄金のエクスタシー)」を再演。1部の演奏は物足りなかったけれど、アンコールの演奏はよかった。オーケストラ、リズムセクション、合唱、ソプラノが一体となって怒涛のようにクライマックスになだれ込む。圧巻です。
アンコールの3曲目は「オン・アース・アズ・イット・イズ・イン・ヘブン(地上の楽園)」を再演。スクリーンにはエンニオ・モリコーネの幼い時からのポートレイトが映し出される。あらためて、エンニオ・モリコーネがもういないことを想って、しみじみしました。
よいコンサートでした。
ありがとう、エンニオ・モリコーネ。
2004年の「エンニオ・モリコーネ in JAPAN」のときはオリジナルTシャツなんか売ってましたが、今回の物販はCDのみ。
記念に「モリコーネ・プレイズ・モリコーネ[完全版]」を買いました。以前出たものとは曲順が異なり(コンサート通りの曲順に変更)、ボーナストラックを4曲追加した改訂版です。
セットリスト
(作品名、曲名はパンフレットの表記をベースにしています)
PART I
- The Untouchables -
『アンタッチャブル』(1987)より
01. 正義の力
02. 勝利の誇り
- The Life and Legend -
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)より
03. デボラのテーマ
04. ポバティ
05. メインタイトル
『海の上のピアニスト』(1999)より
06. ザ・レジェンド・オブ・1900
- Scattered sheets -
『シシリアン』(1969)より
07. メインタイトル
『ある夕食のテーブル』(1969)より
08. メインタイトル
- The Modernity of the myth in Sergio Leone's Cinema -
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(ウエスタン)』(1968)より
09. ハーモニカの男
『続・夕陽のガンマン』(1967)より
10. メインタイトル
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト(ウエスタン)』(1968)より
11. ジルのテーマ
『夕陽のギャングたち』より
12. Titoli(Sean Sean)
『続・夕陽のガンマン』(1967)より
13. エクスタシー・オブ・ゴールド(黄金のエクスタシー)
PART II
01. エンニオのテーマ/HAUSER from 2CELLOS
『ヘイトフル・エイト』(2016)より
02.レッドロックへの最後の駅馬車
- Flashback -
『プロフェッショナル』(1981)より
03. 私だけを(CHI MAI)
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)より
04. メインテーマ
05. 愛のテーマ
『マレーナ』(2001)より
06. マレーナ
07. メインタイトル
- Social Cinema -
『アルジェの戦い』(1966)より
08. アルジェの戦い
『殺人捜査』(1970)より
09. 殺人捜査
『供述によるとペレイラは…』(1995)より
10. 供述によるとペレイラは…
『労働者階級は天国に入る』(1971)より
11. 労働者階級は天国に入る
『ケマダの戦い』(1969)より
12. ケマダのテーマ
- The Mission -
『ミッション』(1987)より
13. ガブリエルのオーボエ
14. フォールズ(滝)
15. オン・アース・アズ・イット・イズ・イン・ヘブン(地上の楽園)
アンコール
『死刑台のメロディ』(1971)より
01. 勝利への賛歌(Here's to you)
『続・夕陽のガンマン』(1967)より
02. エクスタシー・オブ・ゴールド(黄金のエクスタシー)
『ミッション』(1987)より
03. オン・アース・アズ・イット・イズ・イン・ヘブン(地上の楽園)