毛利蔵人のオマージュ
12月11日、原宿(明治神宮前)のhall60で開催されたコンサート「毛利蔵人のオマージュ」に足を運びました。
1997年に46歳の若さで世を去った作曲家・毛利蔵人の作品を演奏するコンサートです。
毛利さんは現代音楽の作曲家ですが、映像音楽ファンには、大河ドラマ『信長』やアニメ『赤毛のアン』の音楽を書いた作曲家と紹介したほうがわかりやすいでしょう。
演奏は日本の伝統音楽演奏家集団「J-TRAD Ensemble MAHOROBA」。三味線、箏、尺八などの演奏家による6人のグループです。
毛利蔵人が和楽器のために作曲した曲を集めた、マニアックなコンサートでした。
マニアックなわりに、前売りは完売、会場は満席。
毛利さんゆかりの方や現代音楽好きの方、邦楽ゆかりの方などが集まったようです。
私が聴きにきたのは、毛利蔵人が名作アニメ『赤毛のアン』の劇中音楽を書いた作曲家だったから。
完全なアウェー感(笑)
しかし、毛利蔵人のオーケストラの曲は聴く機会がありますが、こういうのは珍しい。私も聴くのは初めて。
開演前に、70年代から毛利蔵人を知る作曲家、北爪道夫と福士則夫の2人によるプレトークがあり、毛利さんのプロフィールや人柄、音楽などについてたっぷり40分くらい語られました。なかなか興味深い内容でした。
演奏曲は、1981年から1993年にかけて毛利蔵人が作曲した和楽器のための作品。 (民族音楽としての)邦楽的な要素は薄く、「和楽器による現代音楽」といった趣です。
といっても西洋的な現代音楽を和楽器に置き換えたのではなく、和楽器ならではの響きや奏法を使って何ができるか追及した感じ。知的で刺激的。日本ならではの現代音楽でした。
ミニマルミュージック風に始まって、途中からポリリズム風に展開する、三味線と2面の箏による「三竦み」がよかった。
映画やTVドラマなどの音楽も多く書いた毛利蔵人ですが、やはり現代音楽の作曲家だなぁとあらためて思いました。
…とか真面目に考えながら聴いていたらですよ、
最後にアンコールで1曲となって、
それが、 『赤毛のアン』の曲だというではありませんか!
まったく予想していなかったので、びっくり。
演奏されたのは、『赤毛のアン』から「期待に胸は弾む」。
これは毛利さんのスコアのタイトルで、サントラ収録タイトルは「湖と妖精のワルツ D-1」。
アンの感動を描写する優雅なワルツが、三味線、箏、尺八などの和楽器のアンサンブルで演奏されました。
和風の『赤毛のアン』、新鮮です。
もしや喜んでるのは会場で私ひとりでは…?
だけど、感激しました。
来てよかった~
会場に毛利さんの奥様、毛利十紀子さんがいらしたので、終演後にご挨拶して帰りました。
もちろん、「『赤毛のアン』のサントラ・アルバム作らせていただきました」と。
現代音楽でも映像音楽でも、すぐれた作品を数多く残した毛利蔵人ですが、まだまだ演奏される機会は少なく、知名度もいまひとつの気がします。もっともっと多くの人に聴いてもらいたいと心から願います。