宇宙戦艦ヤマト全記録展
西武渋谷店で開催中の「宇宙戦艦ヤマト全記録展」に2回行ってきました。
1974年に放送されたTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の資料(企画書、設定、シナリオ、絵コンテ、原画、セル画、背景画などなど)を集大成した展覧会です。
膨大な資料の量にまず圧倒されますが、それを第1話から第26話まで、各話別に展示するという展示方法も驚きです。それだけの量の資料があるということなんです。
個人的に見どころだったのは、松本零士先生のサインが入った設定が大量に展示されていたこと。一時期は松本零士先生と『ヤマト』のかかわりを公にすることもはばかられる雰囲気がありましたので、感無量です。そして設定画を見ると、松本零士先生のSFマインドあふれる設定やデザインがいかに重要な役割を果たしたかがわかります。キャラやメカだけでなく、惑星や基地などの設定がいいんですよ。デザインだけでなく、ちゃんと「設定」として考えられている。「原作者」ではなかったかもしれませんが、『ヤマト』の世界観の大きな部分を創り上げたのが松本零士先生なんですね。
縮小されて展示されていますが、絵コンテも注目です。安彦良和さんが描くキャラの達者なこと! 特にユキの可愛さがたまりません。また、松本零士先生によるコンテはSF的な絵作りでガーンと迫ってくる。名場面の数々が松本コンテから生まれました。ときどき戦場まんが風になるところも最高です。
柏原満さんの効果音の展示もよかった。柏原さんのテープはATACに保管されているそうです。会場ではテープの箱が観られるとともに、ボタンを押すと「波動砲」「波動エンジン」「ショックカノン」などの有名な効果音が再生される「音の展示」もありました。
渋谷会場の会期は3月31日までと残り少ないですが、『宇宙戦艦ヤマト』やTVアニメ史に興味のある方は必見です。
2回目の訪問時に、出口の寄せ書きに「腹巻猫」でサインしてきました(もちろん会場スタッフ了解の上)。これから行く方は探してみてください。
今回の展示、私にとっては、単に大ファンである『宇宙戦艦ヤマト』の展示である以上の意味があります。
50年前の1975年。『宇宙戦艦ヤマト』の放送が終了したあと、私はSFマガジンの投稿欄でヤマトファンクラブの会員を募集する呼びかけを見つけ、連絡をとって会員になりました。
それが、氷川竜介さんらが主宰していた「C.B.ヤマト・ラボラトリー」でした。この「C.B.ヤマト・ラボ」は単なるファンクラブではなく、『宇宙戦艦ヤマト』の設定画や原画などの制作資料をアーカイブする、ある種の研究会でした。
と書くとピンとくる方もいると思いますが、この「C.B.ヤマト・ラボ」(のちに改組して「ヤマト・アソシエーション」)の活動が、今回の「全記録展」のベースになっているのです。今回展示された資料の多くが氷川さんらが収集したもので、私は「C.B.ヤマト・ラボ」と「ヤマト・アソシエーション」の会誌を通じて、その中のいくつかを50年前に見ていました。
ただし、50年前に見られたのはオフセット印刷された、線もだいぶ甘くなった複製でした。「全記録展」では原画や原画からカラーで精密に複製したものが展示されていますから、迫力や精度がまったく違います。線や絵の具の盛り上がりから、当時の制作者の熱気が伝わってきます。展示を見ながら「これがほんものの迫力か」と何度も感じ入りました。
中学生の私が初めて参加したファンクラブである「C.B.ヤマト・ラボ」「ヤマト・アソシエーション」の活動は、私のファン活動、研究活動の原点になりました。自分が好きなものを正統に評価するための基盤を作り、後世に残す。その想いは半世紀を経て現在につながっています。50年前はいちファンとして氷川さんたちの活動を見守るだけでしたが、90年代に『宇宙戦艦ヤマト』のBGM集の仕事をする機会があり、その後、氷川さんともいくつかのサントラ・アルバムを作りました。半世紀にわたるご縁に感謝するとともに、氷川さんの想いがこういう形で結実したことを心から祝福したいと思います。
ちなみに2回目の訪問では、示し合わせたわけでもないのに会場で次々と知人に遭遇。
ひとりでは絶対行かないコラボカフェに一緒に足を踏み入れました。
友人とのヤマト談義も久しぶりで、こういう同窓会的な機会としても、この展覧会は貴重でした。