水木しげるの妖怪百鬼夜行展
もうすぐ閉会してしまう「水木しげるの妖怪百鬼夜行展」へ行ってきました。
「水木しげるの妖怪百鬼夜行展」公式サイト
https://mizuki-yokai-ex.roppongihills.com/
会場は六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビュー。
妖怪が出そうな夕方=たそがれどきをねらって入場。
入ってすぐのエリアでは、スマホにアプリを入れて「妖怪ARカメラ」を起動すると、実景に重なって現れる妖怪の姿を見ることができます。
隠れているのは、がしゃどくろ、ぬらりひょん、火車、すねこすり、アマビエ、一反もめん。
入口すぐのパネルに反応して現れる一反もめんと、窓際に現れるアマビエがちょっとわかりにくいですが、全6体キャッチしました。
アマビエが東京タワーと一緒に撮れるのがいいですね。
ほかにも、境港の水木しげるロードにいるのと同じ妖怪のブロンズ像が展示されていました。
展示の本編は水木しげるの妖怪画。
導入は、水木しげるがいかにして妖怪を描くようになったか、を紹介する展示。 水木しげるの少年時代から戦争体験を経て画業に入る歴史と、水木しげるが集めた妖怪関係の古書が展示されてます。
貴重な古書もあって、なかなか興味深いです。
そのあと、妖怪画をずらりと展示。
漫画原稿などはなく、精細な妖怪画をひたすら並べる「妖怪の森」みたいな趣向です。
水木しげる展は何度か行きましたが、今回は『ゲゲゲの鬼太郎』などの漫画キャラクターはあえて省いて、妖怪と妖怪画にフォーカスした展示になってます。
妖怪画を、水木しげるが参考にしたと思われる古書の妖怪画や地方の仮面の写真などとともに展示したり、妖怪が現れる場所別に展示したりしていて、なかなか楽しめます。
ちゃんと原画を展示しているので、目を近づけると繊細なペンタッチや筆のあと、修正のあとなどが見られるのがたまりません。
会場内には妖怪の大きなオブジェもいくつか展示されてますが、それは撮影不可。
入口のぬりかべのみ撮影可でした。
最後に水木先生のまわりに妖怪が現れるARコーナーがあり、出口へ。
出ると、いい感じに日が暮れてました。
夏の夕涼みに妖怪画を見てひととき、みたいな展覧会。
妖怪初心者から水木しげるファンまで楽しめる内容です。
9月4日までなので、行こうと思ってる方はお早目に。
浜松市美術館「ハイジ展」
浜松市美術館で開催中の「ハイジ展」を観てきました。
ハイジ展公式サイト
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/artmuse/tenrankai/images/heide.html
「本気のハイジ展」と謳われたこの展覧会。
そのキャッチフレーズに違わぬ充実の内容でした。
展示スペースは原作関連とTVアニメ関連に大きく分かれています。
原作関連では、ヨハンナ・スピリの人物や生涯を知る資料、『ハイジ』の原作本や翻訳本、それに使用された挿絵などを展示。
スピリ直筆の手紙や各国の『ハイジ』の本、挿絵等が興味深く、貴重です。
日本版の挿絵では、高橋真琴が描いた美少女ハイジと美少年ペーター、蕗谷虹児が描く妙に艶っぽいハイジなどに眼を引かれました。
ハイジファンのみならず、児童文学や児童文化に関心のある人にも楽しめる内容です。
続いて、TVアニメ『アルプスの少女ハイジ』関連の展示。
「高畑勲展」でもけっこうな分量が展示されていましたが、それを上回る充実ぶり。
パイロットフィルム、企画書に始まり、ロケハンの記録、写真、スケッチなど。渡辺岳夫が現地で子どもたちと交流している写真などあって、びっくりしました。
そして、小田部羊一によるキャラクター設定、宮崎駿による場面設定・レイアウト、井岡雅宏による美術設定、高畑監督や富野由悠季による絵コンテ、アニメ原画、セル、背景画、シナリオ、アフレコ台本などなど。 アニメの制作工程をひと通り紹介するボリュームたっぷりの内容です。
ついているキャプションがいちいち的確で感心しました。と思ったら、世界名作劇場やハイジの本を書いている、ちばかおりさんが監修しているのですね。納得です。
音楽関連にもコーナーが設けられていました。岸田衿子直筆の歌詞(完成版と一部違う)や主題歌・挿入歌のメロ譜、松山祐士によるアレンジスコア、BGMのスコア、渡辺岳夫が書いたBGMリスト(の一部)などなど。こちらも初めて見るものが多く、じっくり見せてもらいました。
図録あります。展示品をすべて掲載しているわけではないですが、資料的にも価値があり、読み物としても楽しめます(残念ながら通販の対応はないそう)。
会期は9月11日までなので、気になる人はお早目に。
樹村みのり展
明治大学 米沢嘉博記念図書館で開催中の「樹村みのり展」に、やっと行ってきました…。
不覚にも2月からやっていたのを気づかず、知ったのが4月。
しかし、なかなか行く時間が取れず、ようやく今日行けたわけです。
なにせ、米沢嘉博記念図書館は火曜・水曜・木曜が休館日。平日は月曜と金曜しか開館してない。
土日に外出したくない(人混みが苦手なので)身としてはなかなかハードルが高いのです。
展示スペースは入場無料。
広くはないものの、展示棚をうまく使って、可能な限り多くの原画を展示してます。
「病気の日」「海へ…」「悪い子」「菜の花畑シリーズ」など、愛読していた作品の原画が観られて感激です。
しっかりとした意思を感じさせる少女の瞳や顔のライン、初期の作品に特徴的なカケアミや書き文字なんかに目を惹かれました。
近年描かれた猫の絵も展示されています。
樹村みのりさんは、少年時代にファンになった大好きな漫画家。
最初の出会いは小学校高学年時に読んでいた雑誌『COM』だったと思う。
「おとうと」「解放の最初の日」「お姉さんの結婚」など、小学生にはよくわからないところもありましたが、妙に心をつかまれ、印象に残りました。
で、高校生になった頃、フラワーコミックスの『ポケットの中の季節』1、2や朝日ソノラマのサンコミックス『雨』『ピクニック』などが次々と発売され、さらに雑誌『プチコミック』での樹村みのり&ささやななえ特集、まんが専門誌『だっくす』での樹村みのり特集など、ちょっとした樹村みのりブームに。「菜の花畑シリーズ」が発表されたのもこの頃ですね。
樹村みのり作品には社会的なテーマを扱ったものもありますが、少年少女の、あるは女性の、繊細な心理を描いたものが多い。
日常の中で気づかない、もしくはふだんは忘れているような心の動き、疑問、願いなどをやさしい筆致で表現してくれる。
読んでいて、はっとすることがたびたびあります。
好きなのは「菜の花畑シリーズ」と「お姉さんの結婚」「40-0(フォーティーラブ)」。ほかにもいろいろ。
展覧会を観て、熱心に読んでいた当時を思い出しました。
しかし、今まで行けなかったのは痛恨。
会期は2月から6月までですが、1期~4期に分かれていて、それぞれ「子ども」「菜の花・家族」「人間と社会」「少女・女性」をテーマに展示も一部変わるのだそうです。
結局、4期しか観れなかった…。
いつか、もっと大きい会場で(弥生美術館あたりで)展覧会をやってほしい。
もう1回くらいは行きます。
樹村みのり展は6月6日まで。
https://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/exh-minori.html
「東映動画と高畑勲」東映アニメーションミュージアム
2018年7月にオープンした東映アニメーションミュージアムに初めて行ってきました。
大泉の東映アニメーションスタジオに併設されている、入場無料のアニメミュージアムです。
スタジオが改築される前にも、スタジオ内に東映アニメーションギャラリーという展示スペースがあったのですが、改築されたあとは見違えるほど立派な施設に生まれ変わっていて驚きました。
実は東映アニメーションミュージアムとなってからも一度来たことがあります。そのときは向かいの映画館(T-JOY大泉)で映画観たついでにぶらっと入ろうとして、守衛さんに「予約してないと入場できません」と止められて入れませんでした。
今は新型コロナ感染対策のために事前予約制になっているのでした。
予約できるのは入場日の3日前から前日17:00まで。当日に思いついて行くというわけにはいかない。予定が立てにくい人にはなかなかハードルが高いシステムです。
で、今回は予定を調整して、ちゃんと予約して行ってきましたよ。
目当ては特別展示「東映動画と高畑勲」。
https://iko-yo.net/facilities/2510/news/76787
ミュージアム内は子どもたちが遊べる「わくわくエリア」と「資料展示エリア」に分かれていて、わくわくエリアのみ撮影可。
特別展示「東映動画と高畑勲」は資料展示エリアの一角にありました。
ほんとに「一角」という感じで資料点数は多くない。
『太陽の王子ホルスの大冒険』の資料を中心に、高畑監督が関わった東映動画作品(劇場作品とTVアニメ)の紹介、高畑監督の作業机の再現(?)などで構成されています。TVアニメはどのエピソードに参加したかも場面写つきで紹介されていることに感心しました。
『ホルスの大冒険』のテンションシートなど、「高畑勲展」で展示されていた資料もありました。「高畑勲展」のときより間近で見られるのがうれしい。また、「高畑勲展」になかった資料もあったので、足を延ばした甲斐がありました。
展示としてはこじんまりしたのなので、わざわざ遠くから来るほどのことはないかもしれませんが、近くに来るついでがあれば観て損はないと思います。
特別展示「東映動画と高畑勲」は5月9日までなので、気になる人はお早目に。
資料展示エリアには放送中の作品の設定資料、原画、セル画などの展示や東映アニメーション作品を一望できる展示、アニメを作る工程を紹介する展示などがあり、じっくり見ていたら、あっと言う間に1時間くらい経ってしまいました。
特にプリキュアシリーズの展示が充実していてよかったです。
ミュージアム前の庭には東映アニメーション作品のキャラクターの像があちこちに。
ペロのうしろにはねずみの親子が控えているの芸コマで愉快です。
親子で楽しめる充実した施設なので、早く新型コロナが収束して、予約なしで気軽に入れるようになるとよいなと思います。
特撮美術監督 井上泰幸展
ひええ~ 3時間半も滞在してしまいました。
東京都現代美術館で開催中の「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」。
東宝映画を中心とする特撮映画の美術監督として活躍した井上泰幸さんの業績を一望する展覧会です。
時間をかけるだけの価値ある内容とボリュームでした。
『キングコング対ゴジラ』『怪獣大戦争』『地球防衛軍』『サンダ対ガイラ』『妖星ゴラス』など、東宝特撮映画黄金期の仕事がこれでもかとばかり展示されてるので、それだけでもお腹いっぱい。
さらに独立後の映画やテレビの仕事も『日本沈没』『ダイヤモンドアイ』『電人ザボーガー』『惑星大戦争』『ウルトラマンティガ』など、興味深いものばかりです。
さりげなく『ノストラダムスの大予言』の展示があるのも注目。
展示物の大半はイメージスケッチと図面とコンテ。 立体物や完成映像がないぶん、こちらも想像力を働かせて見ることになります。
特撮の現場を想像しながら見るのがなかなか楽しい。
どんなイメージを浮かべ、どんな計算を働かせながらスケッチや図面やコンテを描いていたのだろうと…。
そして、完成映像を思い出して、「これがああなるんだ」と考えるとぐっとくるものがあります。
特にコンテがすごいなぁ。
構図はもとより、細かい動きまで書き込まれていて、演出の重要な部分を井上さんが担っていたことがわかる。
特撮ファン、映画ファン必見ですよ。
模型を作る人や映画美術に関心がある人、そういう方面の仕事に進みたい人にもお奨めします。
写真が撮れるのは入り口のロゴと最後のコーナーの岩田屋模型だけ。
岩田屋の作り込みがすごくて、撮影に20分くらい時間かけてしまいました。
「井上泰幸展」は6月19日まで。
今後地方への巡回などは予定されていないそうです。そのぶん会期はたっぷりとってあるそうなので、気になる方はぜひ見ておいてください。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/yasuyuki-inoue/
トキワ荘マンガミュージアム企画展「鉄腕アトム」
トキワ荘マンガミュージアムの特別企画展「鉄腕アトムー国産初の30分アニメシリーズー」を観覧してきました。
隣接する公園では桜が満開。
1963年にスタートしたTVアニメ『鉄腕アトム』にフォーカスした展覧会です。
コンパクトな展示ですが、絵コンテの原本(青焼きでなく)が展示されていて驚きました。演出家のセレクトが、手塚治虫、林重行(りんたろう)、杉井儀三郎、山本暎一、出崎統、富野喜幸としびれます。
ほかにも、制作進行表やカット袋、ガリ版刷りのシノプシスとか、マニア心をくすぐるものが並んでいて、なかなか刺激的でした。
第1話の上映や関連商品の物販もあります。
キャラクター設定を使った大判ポストカードがファン心理をついてきてニクイ。3種類買ってしまいました。
展示は4月10日まで。詳細はトキワ荘マンガミュージアム公式サイトをご覧ください。
https://tokiwasomm.jp/exhibition/2021/11/post-34.php
安彦良和 機動戦士ガンダム THE ORIGIN展
EJアニメミュージアムで開催中の「安彦良和 機動戦士ガンダム THE ORIGIN展」に行ってきました。
安彦さんといえば、大胆にして繊細な、魔法のようなラインと強弱で描かれる描線。
それが生で見られるのですから、もう眼福、眼福です。
高校生時代に『勇者ライディーン』の設定画を初めて見たとき(コピーでしたけど)、目が吸い付けられましたものね。
このあいだ放送された「漫勉neo」でも、その驚異のペンタッチ…ではなくて筆遣いが注目されていました(安彦さんは筆で漫画を描いてます)。
なので、私にとっては、カラー原画よりも白黒原画のほうがうれしい。
今回は漫画版『THE ORIGIN』の原画が多数展示されているので、白黒画がたっぷり見られる。
興奮しながら会場を回りました。
あ、カラー画ももちろんいいですよ。
最後に安彦さんの仕事場を再現したコーナーがあり、その脇に、鉛筆で描かれたラフや下書き(ネーム)が展示されています。
それも興味津々でした。
こういうものが生で見られるのが、展覧会の醍醐味です。
ランチに角川食堂の「THE ORIGIN展」コラボメニュー「安彦先生お気に入り!お稲荷さん&出汁巻き卵定食」。出汁巻きたまごが予想以上のボリュームでした。
「THE ORIGIN展」は、ところざわサクラタウンの角川武蔵野ミュージアム3F、EJアニメミュージアムで3月21日まで開催中。
楳図かずお大美術展
六本木・東京シティビューで開催中の「楳図かずお大美術展」に行ってきました!
やはり天才だ…!!
はじめに説明すると、これは楳図かずおの新作絵画を展示する展覧会で、旧作の原画の展示はありません。
ただ、旧作を紹介するコーナーはあります。
入口からのアプローチは『漂流教室』の絵を使った展示。
続いて展望窓を背景に『わたしは真悟』からインスパイアされたアーティストの展示。
そして、貴重な古い出版物の展示とともに見せる「楳図かずおヒストリー」のコーナー。
ここまで撮影可。
そして、メインとなる連作絵画101点の展示になだれこむ(一部をのぞいて撮影不可)。
タイトルは「ZOKU-SHINGO」。 そう、『わたしは真悟』の続編なのです。
いや、もう圧倒されました。
楳図かずおマンガで印象的な雑誌連載時の扉絵ページ。ああいう迫力ある絵が101枚続くと思ってください。
しかも、フルカラーで!
グロテスクな絵もあれば、抒情的な絵もあり、楳図かずお美女が登場する絵もある。
見ていると引きこまれそうで、つい見入っていると「いやいや、こんな世界に引き込まれたらまずいだろ」と心の声がしてはっとわれに返るという…そんな感じです。
ストーリー仕立てになっており、いわば連作絵画による楳図マンガ。
そして、最後はこうなるのかー!!
観られてよかった。
そのあと、彩色前の鉛筆画の展示があり、ここがちょっと変わった趣向になってます。
くわしくは行った人のお楽しみということで。
最後に『14歳』の絵を使った展示と楳図マンガにインスパイアされたアーティストの展示。ここからふたたび撮影可。
堪能しました。
楳図かずおファンを長く続けていますが、こんな形で新作が観られるとは。
楳図ワールドをくぐり抜け、生還したような気持ち。感無量です。
若い女性の来場者が多かったのが印象的でした。
「楳図かずお大美術展」は3月25日まで、東京シティビューで開催。
https://umezz-art.jp/
雑誌『芸術新潮』2022年2月号は、この展覧会にあわせた楳図かずお特集。
大美術展への案内としても恰好で、読んでおくとより興味深く観られると思います。