「カムカムエヴリバディ」が終わってしまった
4月8日、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』 が最終回を迎えました。
よかったなぁ。
「え~っ!?」と思うとこもあったけど、それも含め楽しみました。
放送開始前に「ラジオの英語講座」がモチーフと聞いていたので、「ラジオ英語講座の講師になって活躍する女性の話か~」と思っていたのですよ。
ところが始まってみると英語講座は出てくるけど、講師になるようすはない。
安子編からるい編になっても、英語を使って活躍するわけではない。
観ているうちに、「あ、これは『ひよっこ』と同じなんだ」と思いました。
ひとつのことに情熱を持って突き進むヒロインではなく、ふつうの女性の山あり谷ありの人生を描こうとしている。
もともと朝ドラの始まりは獅子文六の家庭小説が原作だったわけですから、こういう方向がむしろ原点回帰と言えるかもしれません。
ひなた編の終盤になって、ようやく英語が仕事とからんでくる。
英語講座は3人のヒロインの時代と人生をつなぐ役割だったのですね。
そして、最終週になってとうとう、ひなたが英語講師になり、実はこの物語全体が英語講座のテキストだったことがわかるという驚愕の展開。
これは「やられた~」と思いました。
脚本は『ちりとてちん』を手がけた藤本有紀さん。
『ちりとてちん』は佐橋俊彦さんの音楽含め大好きな朝ドラのひとつでした。
そして、『ちりとてちん』もまた、落語がテーマと思わせて、家族と友情の物語に収れんしていく作品。
藤本さんて、笑いの中に一本筋の通ったテーマを突っ込んでくるひねりのきいた作劇やネタを丹念に拾っていくのが実にうまいなと思います。
今回もネットでは「怒涛の伏線回収」って話題になっていますが、想像ですけど、すべてが「伏線」ではなくて、過去の描写からネタをうまく拾っていった結果でないかな(もちろん伏線もあったと思いますが)。
『あしたのジョー』の「真っ白な灰」だって伏線ではなかったわけだし。過去に登場したキャラクターが再登場するだけでは伏線とは呼びませんよね。
最終話はカーテンコールみたいで楽しかった。これも伏線回収というより、ずっと観ていたファンへのサービスが入ってる気がする。いちばん受けたのは一子の旦那さん。ビリーのキーホルダーは明らかにねらった伏線でしょうね。
それにしても、藤本有紀さんて「偶然がキャリアを作る」ってことを信じてる…というか、無意識にそう考えてる人なんだと思います。
「偶然がキャリアを作る」というのは心理学者のJ.D.クランボルツ教授が提唱したキャリア形成理論で、私は会社員やってた時代に『その幸運は偶然ではないんです! 』という本を読んで深く共感した経験があります。
乱暴に言えば「人生は計画したってその通りにならない。キャリアプランなんて作るな」という考え方です。
『ちりとてちん』のヒロインも『カムカムエヴリバディ』に登場する人たちも、キャリアにそれほどこだわりを持っていない。いさぎよく捨てる思い切りのよさがあります。それがめぐりめぐって、よい結果や出逢いを生み出すことが多い。
「縁は異なもの」というか「禍福はあざなえる縄のごとし」というか、「人生は思うようにならないけれど、捨てたものじゃないよ」と言われてるような気分になります。
クランボルツ教授の理論を言い換えると、「計画通りにいかないから行き当たりばったりでいい」というのではなく、「チャンスがきたらそれをつかめ。いつでもそうできるように準備しておけ」ということになる。これは『カムカム』で虚無蔵が言っていたこととまったく同じ。話はそれるけど、虚無蔵もそうとう長生きで元気だなぁと思いました。
3代にわたって描かれたストーリーの中では「ひなた編」がだんぜん面白かった。
安子編、るい編もよかったけれど、まだ従来の朝ドラっぽい印象があります。ヒロインは逆境に堪えて、幸せをつかもうとする。いっぽうのひなたは、ぼーっとしてて、何をやっても長続きしない。なにがやりたいか自分でもわからない。すごく現代的だし、共感が持てる。「これでいいんだ」と言われている気がしてほっとします。
ひなたが生きた時代が自分のそれと重なるので、描かれる風俗もなじみがあるものばかりで親近感がわきました(流行歌とかテレビ番組とか)。
『カムカムエヴリバディ』って、かいつまんで言えば、50年にわたる親子げんかを孫がはからずも取りもって仲直りさせる話なんですよね。 ふりかえると、安子編もるい編も、ひなた編のための序章ではなかったかとすら思えてきます。
ひなた編をもっとじっくり観たかったなぁ。省略された時代のことや、登場人物の描かれなかったエピソードなど、いくらでもふくらませる余地があったもの。
米米CLUBの金子隆博さんによる音楽もよかったです。金子さんが『あさイチ』に出演したときに音楽制作の舞台裏を話してくれたので、劇中に流れる音楽にも注目していました。ライブのシーンで金子さんがピアニストとして出演しているのを私は見逃しませんでしたよ。
サウンドトラックは「劇伴コレクション Vol.1」「劇伴コレクション Vol.2」「ジャズ・コレクション」に続いて、なんと4枚目となる「オリジナル・サウンドトラック CLIMAX」が発売されるようです。すごい。
特撮美術監督 井上泰幸展
ひええ~ 3時間半も滞在してしまいました。
東京都現代美術館で開催中の「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」。
東宝映画を中心とする特撮映画の美術監督として活躍した井上泰幸さんの業績を一望する展覧会です。
時間をかけるだけの価値ある内容とボリュームでした。
『キングコング対ゴジラ』『怪獣大戦争』『地球防衛軍』『サンダ対ガイラ』『妖星ゴラス』など、東宝特撮映画黄金期の仕事がこれでもかとばかり展示されてるので、それだけでもお腹いっぱい。
さらに独立後の映画やテレビの仕事も『日本沈没』『ダイヤモンドアイ』『電人ザボーガー』『惑星大戦争』『ウルトラマンティガ』など、興味深いものばかりです。
さりげなく『ノストラダムスの大予言』の展示があるのも注目。
展示物の大半はイメージスケッチと図面とコンテ。 立体物や完成映像がないぶん、こちらも想像力を働かせて見ることになります。
特撮の現場を想像しながら見るのがなかなか楽しい。
どんなイメージを浮かべ、どんな計算を働かせながらスケッチや図面やコンテを描いていたのだろうと…。
そして、完成映像を思い出して、「これがああなるんだ」と考えるとぐっとくるものがあります。
特にコンテがすごいなぁ。
構図はもとより、細かい動きまで書き込まれていて、演出の重要な部分を井上さんが担っていたことがわかる。
特撮ファン、映画ファン必見ですよ。
模型を作る人や映画美術に関心がある人、そういう方面の仕事に進みたい人にもお奨めします。
写真が撮れるのは入り口のロゴと最後のコーナーの岩田屋模型だけ。
岩田屋の作り込みがすごくて、撮影に20分くらい時間かけてしまいました。
「井上泰幸展」は6月19日まで。
今後地方への巡回などは予定されていないそうです。そのぶん会期はたっぷりとってあるそうなので、気になる方はぜひ見ておいてください。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/yasuyuki-inoue/
追悼・藤子不二雄A先生
漫画家の藤子不二雄A先生が亡くなりました(Aは丸の中にAが正式表記)。88歳でした。
まだまだお元気と思っていたので驚きました。
本当に残念です。
小さい頃から怪獣好きだった私は、小学校低学年時はモノクロ版アニメ『怪物くん』に夢中。もちろん漫画も読みました。
小学校高学年になり、つけペンでマンガを描くことを覚えた頃は、石森章太郎の『マンガ家入門』と藤子不二雄の『まんが道』がバイブルに。
小学~中学生時代に連載されていた『魔太郎がくる!!』は単行本全巻そろえて読みました。
長じては、『笑ゥせぇるすまん』をはじめとするブラックで 怪奇な作品を追いかけて、「奇妙な味」を楽しませてもらいました。
『まんが道』(最初に出た単行本で現在「あすなろ編」と呼ばれているもの)で強く印象に残っているのが、主人公2人が漫画対決をするときに使った手作りの幻灯機。
漫画の中でその構造が図解されています。箱の中に電球と反射板とレンズを仕込んだだけのシンプルな仕組み。小学生時代は模型や工作が好きだった私は、これを自作して、友だちといっしょに自分で描いた漫画を壁に映したりして楽しんでました。
『まんが道』って、そういう、子どもの心にも強く働きかけるような、「読んだら手を動かさずにいられない」熱気、エネルギーが詰まっていたんです。
サウンドトラックの仕事では、日本コロムビアでアニメ『笑ゥせぇるすまん』のサントラを作らせていただいたのが思い出になりました。
数々の作品をありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。
☆藤子不二雄(A)さん死去、88歳(読売新聞オンライン)
ナイトメア・アリー
ギレルモ・デル・トロ監督の新作『ナイトメア・アリー』を観ました。
内容をよく知らなかったので、てっきり、ダークなファンタジー映画だと思っていたのです。
それというのも、昔『夢喰いメリー』というアニメがあって、その主人公の名がメリー・ナイトメア。夢魔と戦うヒロインの話です。だから、この映画も「ナイトメア・アリー」というキャラクターが登場する話かと…。
映画を観ながら、「誰がアリーなんだろう…」と思っていましたよ。
実際はファンタジーではなく、フィルム・ノワールというか、犯罪映画です。
しかし、現実と幻想があいまみえる、デル・トロらしい映画でした。
原題は「Nightmare Alley」。「Alley」は小路、路地のことで、「ナイトメア・アリー」は「悪夢の路地」みたいな意味になります。
1947年に同じ原作を映画化した『悪魔の往く町』という映画が公開されているそうですが、そちらは未見。
序盤はカーニバルの見世物小屋が舞台。ちょっとレイ・ブラッドベリ的香りがあり、デル・トロらしい。
映画のメインは、カーニバルにいた主人公が都会に出てきてから。第二次大戦直前の不安な世情を背景にしたクライムサスペンスの趣。ブライアン・デ・パルマあたりが好きそうな感じです。
主人公は人の心を読む読心術師。読心術といってもトリックです。野心を持った男が読心術を使って人の心をあやつり、のしあがろうとする。 読心術という幻想を現実にしようとし始めるわけです。
が、結局、自分が生み出した幻想に手痛いしっぺ返しをくらい、破滅していく。
かいつまむとそんな話。
「ナイトメア・アリー」=「悪夢の路地」とは、主人公の人生の比喩だと思いますが、この映画全体が、悪夢の中をさまよっているような妖しい雰囲気に満たされています。
映像が暗い。空はどんより曇っているか、雪や雨が降っている。 室内は光が射していても半分は影になっている。主人公はいつもその影の側にいるか、顔に深く影が落ちている。
これも主人公が闇に囚われていること、そして、この世界が悪夢であることの象徴的表現でしょう。
登場人物の中では、なんといってもケイト・ブランシェットが演じる謎めいた精神科医が印象的でした。彼女は、いってみれば、主人公を誘う夢魔であり、メフィストフェレスの役割ですね。
音楽はもともと『シェイプ・オブ・ウォーター』のアレクサンドル・デスプラの参加が予定されていたそうですが、スケジュールの都合でネイサン・ジョンソンに交代。弦楽器中心のオールドスタイルの音楽で効果を上げています。
「明日ちゃんのセーラー服」と「その着せ替え人形は恋をする」
もう4月になってしまいましたが、3月で放送終了し、あちこちで“ロス”の声が聞こえるアニメ『明日ちゃんのセーラー服』と『その着せ替え人形は恋をする』の話。ちなみに「明日ちゃん」は「あけびちゃん」、「その着せ替え人形」は「そのビスク・ドールは」と読みます。
私もTV放送と動画配信でしっかり観てました。
2作ともアニメ制作がCloverWorksということで、ちょっと似たテイストがあります。特に女性を描く作画の密度の高さ。上気する肌や瞳の輝きや髪の毛の表現、ディテールにこだわった衣服の描写など。そういえば、どちらも衣装が重要な要素となる作品です。
『明日ちゃんのセーラー服』は背景も含めた映像が細やかで美しい。そして、布の質感や重さまで感じさせる、フェティシスティックに見えるほどの衣服の描写に目をひかれます。 舞台が女子高ということもあり、秘密の日常をのぞき見ているような瞬間があってドキドキします。
物語は格別ドラマティックなことも起こらず、地方の女子高校生の日常をゆったりと描く、ふんわりした作品。
しかし、それが目的ならここまでフェティシスティックな描写は必要ないはず。
観ているうちに、これは一種のアイドル映画、ファッション映画なのだと思いました。
ヒロインを魅力的に見せる、衣装を美しく見せる、実写でいうフォトジェニックみたいなことをアニメでやろうとしている。
映像が美しいほどに、過ぎていく時間や若さへの愛しさがこみあげてくる。これもアイドル映画の常道です。
いっぽうの『その着せ替え人形は恋をする』はもう少しポップな作品ですが、コスプレを題材にしているのが特別で、面白いところ。こちらも着替えのシーンがよく出てくるので、観ていてドキドキすることが多い。
しかし、主人公の男子・五条くんがドキドキしたり、うろたえたりしてくれるので、うしろめたさが薄まります。
最初は、あまりぱっとしない男子に美少女が恋してくれる、願望充足アニメ(私が勝手に呼んでいる)かと思っていたのです。
ところがこれも観ているうちに印象が変わって、むしろ逆なのだと思うようになりました。
コスプレ好きのヒロイン・海夢(まりん)が恋をする。自分の気持ちにとまどいながらも、小さなことに一喜一憂し、距離を近づけようとする。
その過程が着替えシーン以上にドキドキします。 少年向けに見えて、実はすごく少女漫画的。『その着せ替え人形は恋をする』って、内容を的確に表現したうまいタイトルだと思いますね。
音楽もよかった。
『明日ちゃんのセーラー服』の音楽は昨秋のアニメ『見える子ちゃん』の音楽を担当したうたたね歌菜さん。ピアノを使った瑞々しい音楽が素敵でした。『見える子ちゃん』の音楽に注目していたので、『明日ちゃん』は放送前から楽しみにしていたのです。
『その着せ替え人形は恋をする』の音楽は中塚武さん。こちらはコミカルな場面が多いこともあり、ギターやシンセを使った軽快な音楽が心地よい。私が中塚さんの名前を覚えたのは『セクシーボイスアンドロボ』というドラマでした。
サントラはどちらもBlu-ray/DVD同梱でのリリース。単体リリースでないのは残念ですが、盤になるだけありがたいと思うべきかもしれません。
『明日ちゃんのセーラー服』は限定版第4巻~第6巻、『その着せ替え人形に恋をする』は限定版Vol.1とVol.3にサウンドトラックが同梱されます。
トキワ荘マンガミュージアム企画展「鉄腕アトム」
トキワ荘マンガミュージアムの特別企画展「鉄腕アトムー国産初の30分アニメシリーズー」を観覧してきました。
隣接する公園では桜が満開。
1963年にスタートしたTVアニメ『鉄腕アトム』にフォーカスした展覧会です。
コンパクトな展示ですが、絵コンテの原本(青焼きでなく)が展示されていて驚きました。演出家のセレクトが、手塚治虫、林重行(りんたろう)、杉井儀三郎、山本暎一、出崎統、富野喜幸としびれます。
ほかにも、制作進行表やカット袋、ガリ版刷りのシノプシスとか、マニア心をくすぐるものが並んでいて、なかなか刺激的でした。
第1話の上映や関連商品の物販もあります。
キャラクター設定を使った大判ポストカードがファン心理をついてきてニクイ。3種類買ってしまいました。
展示は4月10日まで。詳細はトキワ荘マンガミュージアム公式サイトをご覧ください。
https://tokiwasomm.jp/exhibition/2021/11/post-34.php
勝利確定! ~ウルトラヒーロー バトル・ミュージック・コレクション
届きました~!(買いました)
「勝利確定! ~ウルトラヒーロー バトル・ミュージック・コレクション」
トヨタトモヒサさん渾身の企画・構成・解説によるCD、全3巻。
ウルトラマンの戦闘シーンに流れるBGMのコンピレーションです。
昭和編が1枚、平成編が2枚組、ニュー・ジェネレーション編が2枚組とボリュームたっぷり。この配分に時の流れを感じますね。
ポイントのひとつは劇場作品も含めていること。こういう企画では劇場作品がよけられちゃうことも多いので、並べて聴けるのは新鮮だし、ありがたい。
ほかにも、同一モチーフのヴァリエーションを並べたり、ボーナストラックで変身(登場)ブリッジをまとめたり、解説で各曲の使用場面にも言及したりと、ファンのツボをついてくる作りに頭が下がります。
昔、高島幹雄さんの企画で「ウルトラマン テーマ音楽コレクション」というCDの構成と解説のお手伝いをしたことがありますが、なかなか、そこまではできませんでした。
ウルトラマンシリーズの歴史を音楽でたどるアイテムとしても恰好ですね。 CDを聴いてから本編を観返すという楽しみ方もありそう。
細かいことで感心したのは、昭和編は1枚なのにCDのケースを少し厚めのものにして、2枚組の平成編、ニュー・ジェネレーション編と背の幅をそろえてあること。棚に並べたときの統一感を考えての配慮でしょう。メーカーの気合を感じます。
CDが売れない時代ですが、こういう企画が通って実現するのは本当にうれしいです。
コロムビアの通販サイトで3巻セットを買うと、特典の三方背収納ケース付き!(なくなり次第終了)
https://shop.columbia.jp/shop/g/gS4165/
「平家物語」はすごかった
フジテレビの「+Ultra」枠で放送されていたアニメ『平家物語』が終了しました。
最終回まで観ました……。
すごいものを見せてもらったなぁ。
脚本も映像も演出も、すべてが高次元。
くらくらして咀嚼が追い付きません。
放送を録画していたのですが、いつも配信動画をパソコンで観てました。
集中して観たいから。
音もヘッドフォンで聴きたい。
そのくらい、密度が高い。
一見、日本の伝統絵画風に見える渋い画作り。でも、キャラクターはシンプルな線ながら立体感をもって描かれているし、構図も平面的に見えて奥行きがある。計算された構図、さりげなく画に陰影を与えるエフェクトなど、細かく見れば見るほど、考え抜かれ、手をかけて映像化されているのがわかります。
物語も、びわというふしぎな目を持つ少女を設定したことで、多層的な視点を持つものになっている。びわには登場人物の行く末が見えている。それは視聴者であるわれわれの視点でもある。そのことが「平家物語」の無常観を際立たせます。
びわには定められた運命を変えることはできない。スティーブン・キングの『デッド・ゾーン』を思わせます。でも、びわは平家の人々を記憶し、語り継ぐことで、この世から消えたものを永遠のものにしようとする。人の世の営みとは、人生とはなんなのか、そんなことを考えさせられます。
と、とりとめもなく書いてみましたが、この作品はもっと奥深い。まだまだ読み解けません。
個人的には、キャラクター原案に高野文子さんが参加しているのがツボでした。
なので、『わたしたちが描いたアニメーション「平家物語」』も電子書籍版を買いました。
電子版特典に「高野文子キャラクター原案・イメージスケッチ 2P(紙書籍版未収録カット)」が付いてくるのです。
あと驚嘆すべきは牛尾健輔さんの音楽。
『平家物語』に電子音楽……。予想外というか、牛尾さんが参加した時点で予想はできたのですが、それでも「こうくるか!?」という驚きがあります。
サントラはCDとアナログ両方買いましたよ。
これもまだじっくり聴けていない。
3/26発売の『CONTINUE Vol.76』に「山田尚子(監督)×牛尾憲輔(音楽)10,000字対談」が載るそうなので、それ読んで、本編再見しながら聴こうと思います。
ドライブ・マイ・カー
話題の映画『ドライブ・マイ・カー』を観ました。
実は私は村上春樹がちょっと苦手…。
でも、映画はとてもよかったです。
上映時間3時間(179分)の長さをまったく感じない。
映像と芝居の密度の高さ、そして、サスペンス的要素と語り口の巧みさがあいまって、まさに優秀なドライバーの運転に身をゆだねて車に乗っている気分で観ました。
映画の中では、過去と現在、演劇と現実、嘘と真実、死者と生者、さまざまな要素が重なり合い、物語が二重三重に見えてくる。
そういうところは村上春樹っぽい(私のイメージです)。
風景を巧みに切り取った映像や環境音を生かした音響も印象的。
特に役者の「声」が圧倒的な存在感で響いてきます。
映画の中で「声」はとても重要な役割を担っているので、これは演出のねらいなのでしょう。
石橋英子さんの音楽もよかった。
メロディを聴かせるタイプの音楽ではなく、サウンド感重視の演出。
音楽の入りと抜きのタイミングが絶妙です。芝居をじっくり見せるところは音楽を入れず、緊張がふっとゆるむタイミングで音楽がすっと入ってくる。
実に効果的だし、気持ちいい。
最後のエピローグの場面で、現実に引き戻されました。
劇中劇のチェーホフの芝居の台詞が今われわれが生きる現実と重なってきます。
ミラクルガール オリジナル・サウンドトラック
《SOUNDTRACK PUB》レーベル第29弾 「ミラクルガール オリジナル・サウンドトラック」 を3月30日に発売します。
https://www.soundtrackpub.com/label/cd/STLC045.html
1980年に放送されたTVドラマ『ミラクルガール』の初のサウンドトラック・アルバムです。
『ミラクルガール』は『プレイガール』『ザ・スーパーガール』の路線を受け継いだ、東映制作の女性探偵アクションドラマ(お色気アクションとも言われる)。
由美かおるを主演に迎え、探偵事務所オフィスミラクルに所属する7人の女性探偵の活躍を描く痛快作。痛快作と言ってもシリアスなエピソードもあり、コメディあり、 ホラーありと、バラエティに富んだエピソードが楽しかったです。
音楽は同時期に東映のTVドラマ『非情のライセンス』も手がけていた渡辺岳夫。
キラキラしたシンセの音やハモンドオルガンなどを使ったミラクルサウンドをお聴きください。女性アクションものということで、ちょっと『キューティーハニー』っぽいところもあります。
由美かおるが歌う主題歌も収録。
BGMは全曲初商品化です!
Amazonの予約がまだできませんが、ARK SOUNDTRACK SQUAREさんで予約受付中です。 https://arksquare.net/jp/detail.php?cdno=STLC-045
この女性探偵アクション路線では、『ザ・スーパーガール』のサントラを日本コロムビアで作らせていただいたのも思い出深いです。こちらの音楽は馬飼野康二さん。
Columbia Sound Treasure Series ザ・スーパーガール オリジナル・サウンドトラック
その次の作品のサントラを自分で作ることができたのも、ご縁だなぁと。
ちなみに『ミラクルガール』は今、YouTubeのTOEI Xstream theaterで、毎週1話ずつ配信されています。 https://www.youtube.com/playlist?list=PLWOibgbqbs8M1amBL35PtiJCn7LjXP2vc